株価暴落、投資リスクに不安を感じる初心者の方へ。
株式投資を行ううえで、避けて通れないのが株価暴落のリスクです。近年では、2020年のコロナショックや2022年のロシアによるウクライナ侵攻など、世界的な出来事が株価を大きく揺るがしました。
直近では2024年8月や9月にも暴落があり、不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
図:日経平均 2004年7月最高値からの下落
しかし、株価が暴落してもリスクを抑え、チャンスに変える方法があります。今回は株価暴落の原因や、取るべき対処法をわかりやすく解説します。
確実な資産形成に向けて、ぜひ本コラムを活用してください。
目次
株価暴落は必ず起こる|投資リスクとして認識が必要
株価暴落は必ずと言っていいほど発生しています。21世紀に入ってからも、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックなど、大きな株価暴落を経験してきました。これらは、経済成長の過程で起こる「イベント」に近く、完全に避ける方法はありません。
しかしながら、株価暴落の後には必ず経済は回復し、以前よりも成長を遂げて今日に至ります。2024年現在、日本は「失われた30年」から脱却し、株価は過去最高値を更新しました。
現代社会は情報過多の時代です。日本銀行総裁や、政府要人の発言など、情報が瞬時に拡散されています。特に、SNSでのインフルエンサーの発言は、センチメント(心理)を大きく揺さぶります。
私たちは投資リスクに備えるため、知識を深めておくことが重要です。
株価暴落時に起こる投資リスクを解説
株価暴落時には、大きく3つの投資リスクが生じます。
資産価値の減少リスク
元本割れのリスク
パニック売りのリスク
上記は株価の暴落時に起こるリスクを段階的に表しています。早い段階で対処できれば、株価暴落の局面でも損を抑えられます。ぜひ、理解を深めておいてください。
1.資産価値の減少リスク
株価暴落時には、資産価値の大幅な減少は避けられません。2000年以降で最も深刻だったリーマンショックでは、株価はピーク時から51.3%も下落しました。記憶に新しいコロナショックでも30.6%の下落を記録しています。
2024年8月5日の暴落時には、ブラックマンデー翌日を超える下落幅を記録しました。簡単に言えば、わずか1日で10%以上も価値が下がる可能性も否定できません。
また、暴落期間の長さでも、資産価値の減少幅は変わります。リーマンショックのように長期化すれば、損失はさらに拡大する恐れがあります。
株価暴落時は、1日で資産が10%減少するリスクを念頭に置いておきましょう。
2.元本割れのリスク
株価暴落の期間が長期化すると、資産は激しく目減りしていきます。暴落・ショックと言われる期間が長引くほど、資産は減少し続けます。
2000年以降で暴落期間が長かったのは「ITバブル崩壊」です。その間の下落期間は226日にも及びました。次いでリーマンショックの185日です。暴落の期間が続くと資産が減るだけでなく、元本割れの投資リスクも生じます。
元本割れは、価格変動のある金融商品に投資する際に常に存在するリスクです。「今が底値」と買い直しても、さらに下落し続け、元本割れの結果を招いてしまいます。
暴落時にも冷静さを保ち、安易な売買といった行動は控えましょう。
3.パニック売りのリスク
株価の暴落が生じるとパニックに陥り、「投げ売り」と呼ばれる行動に出る方も少なくありません。投げ売りとは、株価暴落時に保有株を安値で売却してしまう行為です。
投げ売りの広がりは市場全体の売りを誘発し、株価の下落に拍車がかかります。いわゆる「パニック売り」と呼ばれる現象で、連鎖的に下落が続く悪循環を引き起こします。
投げ売りに追い込まれやすいのは、レバレッジ(※1)を効かせた「信用買い」をしている機関投資家や投資上級者です。彼らは追加保証金の発生や強制決済のために、保有株を投げ売りせざるを得ない事情があります。
一方、時間的制約の少ない一般投資家は、このような状況に巻き込まれる必要はありません。深く考えずに「パニック売り」すると、あとの株価が回復する局面で利益を逃す結果になります。
(※1)少ない自己資金で大きな投資を行うこと
株価暴落の引き金となる3つの要因
株価暴落が起こる背景には大きく3つの要因があります。
世界的な出来事|戦争・パンデミック
国内情勢の不安定化|政策変更・経済指標の悪化
企業の業績悪化|業績予想の下方修正・不祥事
株価暴落がいつ生じるのか、正確な予測は困難です。ただ、以下を読んでいただくと、普段からチェックしておくべき情報や対策のヒントがつかめます。投資リスクの回避に、ぜひ役立ててください。
1.世界的な出来事|戦争・パンデミック
世界的な出来事は、株価暴落の大きな引き金となります。
特に、資源産出国を巻き込んだ戦争は株価の下落に直結します。2022年に勃発したウクライナ戦争では、エネルギー価格の高騰やサプライチェーン(※2)の混乱が生じました。結果として、世界経済に大きな影響を与えています。
現在進行中のイスラエル紛争も、原油価格に与える影響は甚大です。政情不安は、世界経済の悪化・株価の暴落を引き起こします。
パンデミックも経済活動を停滞させ、企業業績を悪化させる要因です。直近では2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行があります。人の移動、物資の流通が制限され、多くの企業が業績悪化に苦しみました。
(※2)製品の原材料・部品の調達から販売に至るまでの一連の流れ
2.国内情勢の不安定化|政策変更・経済指標の悪化
国内政治の不安定化も株価を揺るがす大きな要因です。
直近の例では、2024年10月27日の衆院選で与党が過半数を割りました。これにより、緊縮財政や増税など、企業活動を抑制する政策を掲げる政権が誕生する可能性もあります。政策の変更は、株価の下落に直結する可能性も出てきます。
また、日銀の金融政策変更も株価に大きな影響を与えるイベントです。7月末の日銀会合(※3)では、市場との対話が不十分なまま、急な追加利上げを決定しました。その結果、8月2日にはブラックマンデー以来の下げ幅を記録し、8月5日には更なる暴落へと発展しました。
国内の政治・経済状況は、常に変化し株価に大きな影響を与える可能性があります。
(※3)日本銀行が金融政策の運営について議論し、決定する会合のこと。
3.企業の業績悪化|業績予想の下方修正・不祥事
個別企業の業績悪化も、株価暴落の引き金となりえます。特に、市場への影響力が大きい企業の動向は要注意です。
2024年8月、世界を代表する半導体メーカーのNVIDIAの決算では、売り上げが市場の期待に届きませんでした。これを受け「AIバブルの終焉」と見る動きから、ほかのAI関連銘柄を巻き込んで株価を下落させています。
また、企業の不祥事も株価の暴落につながります。2021年12月、M&A業界のリーディングカンパニー「日本M&Aセンター」は、不適切会計問題で株価が急落しました。また、マニュアル作成の「グレイステクノロジー」は、売上高の4割に及ぶ粉飾決算が発覚し、上場廃止へ追い込まれました。
このように、企業の業績悪化(成長鈍化)や不祥事は、株価暴落を引き起こす可能性があるのです。
株価暴落の際に取るべき3つの対処法
株価の暴落が起きた際は、まず原因を把握する必要があります。慌てずに冷静な判断をするために、以下の3つの対処法を心がけてください。
慌てて売らない
適切な損切り
ポートフォリオの再構築
暴落局面では、慌てず売らず、かつ適切な損切も必要です。相反する投資判断を織り交ぜつつ、ポートフォリオの再構築に努めなければなりません。
1.慌てて売らない
株価暴落時は、保有株がみるみるうちに値下がりしていきます。しかし、そこで慌てて売却してしまうと、大きな損失が確定してしまいます。また、株価回復時に恩恵を受ける機会も逃しかねません。
図:2024年8月暴落から回復した例
2024年8月5日の株価暴落では、98%を超える企業が株価を下げました。じつに、800社を超える銘柄がストップ安となりましたが、翌日には回復基調に転じています。短期的なパニックによる暴落は、一時的なものであるケースがほとんどです。
株式投資は、競馬のようなギャンブルとは違います。社会貢献する企業の成長という裏付けがあります。保有株が無価値になるケースは稀であり、権利も失われません。
暴落時こそ慌てて売却せず、状況を冷静に見極めましょう。
2.適切な損切り
株価の暴落時に放置していると、傷口は広がる一方です。大きなマイナスを被り続ける前に、「損切り」して撤退する判断も重要です。
暴落局面では、株価が1日で10%近く下落するケースも多くみられます。暴落の原因が企業の業績悪化など、構造的な問題で長期に及ぶと判断した場合は損切りすべきです。
損切りは周囲に影響されて売却する、パニック売りとは異なります。設定したルールに基づいて行う立派な投資判断で、相場回復の機会を待つための戦略です。市場の動向を理解していれば、暴落後に訪れる底値で買い直すことも可能です。
ただし、損切りはあくまでも最終手段です。損切りによって損失が確定するため、安易に行うべきではありません。状況を見極め、慎重な判断の下で行いましょう。
3.ポートフォリオの再構築
株価暴落時は、ポートフォリオを見直す絶好の機会です。暴落時は、ほとんどすべての株が下落します。この状況を最大限に活かすには、将来性を見込めない銘柄は思い切って売却し、成長が期待できるものに入れ替えるべきです。
具体的な例
上記の表のとおり、暴落の時点では成長が鈍化していたEV関連を切り、DX分野で成長期待の持てる銘柄を買っています。その局面において回復見込みの薄い銘柄を売却し、成長する見込みのある株式を購入するべきです。これは、どの銘柄も下落しているからこそ可能な投資戦略です。
過去の暴落時においても、いち早くポートフォリオを再構築した投資家は、その後大きなリターンを得ています。
株価暴落時に買い増しするメリット
株価の暴落時に買い増しするメリットを以下の2点から解説します。
安値で株を購入できる
回復時のリターンが大きい
暴落局面では、優良企業の株が割安で購入できます。タイミングの見極めが難しい点は否めませんが、しっかりと学んでいけば問題ありません。
1.安値で株を購入できる
銘柄 | 投資ポイント | 8月2日の株価 | 10月31日の株価 |
配当利回り5.33%(8/2時点) | 4,596 | 5,138 | |
自社商品の詰め合わせ | 4,805 | 5,200 | |
すき家、はま寿司などで使える食事券 | 5,676 | 7,690 |
株価の暴落は、優良企業の株を割安で購入できる絶好のチャンスでもあります。普段は高値で手が出せない人気銘柄も、暴落時には 3割、4割以上の割引価格で購入できる可能性もあります。
高配当銘柄や株主優待の充実した銘柄も、より高い利回りで購入できるチャンスです。高配当で有名な日本郵船や、株主優待が魅力的な日清オイリオ、飲食業界の巨人ゼンショーホールディングスが該当します。
暴落時のチャンスに備えて、日頃から余剰資金を確保して準備しておきましょう。
2.回復時のリターンが大きい
暴落時に買い増しをすると、いわゆる「ナンピン効果」が発動します。暴落局面では、安値で株式を取得するチャンスです。その後、元の価格に戻るだけでも十分な利益があり、さらに成長すれば利幅が拡大する可能性があるのです。
図:暴落時に買い増しする例
例えば、1,000円の株を1,000株購入した場合で考えてみましょう。
暴落により株価が500円に下落したタイミングで、新たに1,000を買い増しすると平均取得単価は750円に下がります。その後、株価が800円に回復するだけで、買い増し効果により100,000円の利益となります。株価が回復すればするほど、元の購入時よりも大きなリターンが生まれます。
具体例としては、ソフトバンクグループやファーストリテイリングといった銘柄が該当していました。賢いナンピン買いで、投資効率のアップが期待できます。
株価暴落時に買い増しする投資リスク・デメリット
株価の暴落時に買い増しするデメリットを以下の2点から解説します。
さらなる下落の可能性
判断の難しさと心理的な負荷
暴落局面での買い増しはチャンスである反面、タイミングの見極めが難しい点は否めません。損失を広げないためにも、しっかりと学んでいきましょう。
1.さらなる下落の可能性
株価の暴落は、いったん始まると底を見極めるのが非常に困難です。短期間で回復する場合もあれば、長期にわたって低迷する場合もあり、渦中での予測は容易ではありません。
2008年のリーマンショックでは、日経平均株価は1年で約50%も下落しました。一方、2020年のコロナショックは、比較的短期間で回復しました。各国政府の大規模な金融緩和策が功を奏した形です。
また、個別銘柄においても一見底値に見えた株価が、さらに下落するケースも少なくありません。直近では、コロワイドが2024年8月の暴落後に公募増資(※4)などの影響で再び下落に転じました。10月31日の時点では1,691円まで下げています。
株価の暴落局面では、安易に底値を予測して飛びつくのは危険です。慎重な投資判断を心がけましょう。
(※4)広く一般から資金を調達するために、新たに株式を発行・販売すること。
2.判断の難しさと心理的な負荷
株価暴落時は冷静さを失いやすく、恐怖心や焦燥感に駆られる方も多く見られます。
暴落局面での株価は、市場の心理や経済状況など、さまざまな要因が複雑に絡み合います。そのため、底値を判断するのは容易ではありません。楽観的に考えて買い増しをした結果、さらに下落して損失が拡大してしまうケースも少なくありません。
また、含み損を抱えている状態での買い増しは、精神的な負荷も大きくなります。「今が買い時だ」「さらに下がるかもしれない」と思惑や不安が交錯し、日常生活にも悪影響を及ぼす可能性も考えられます。
損失が拡大した場合、投資への意欲を失ってしまうことにもなりかねません。投資リスクを常に念頭に置き、市場の状況や投資計画を冷静に見極めるようにしてください。
株価暴落に強いポートフォリオの組み方|投資リスク回避
株価暴落の局面でも強さを発揮できるポートフォリオを解説します。
分散投資を心がける|業種・地域・成長性
積み立て投資|ドル・コスト平均法
株価の暴落について、時期を予測する方法はないと考えるべきです。ただし、暴落時でも強いポートフォリオによって、投資リスクの回避は可能です。しっかりとポイントを理解して対策を立てましょう。
1.分散投資を心がける|業種・地域・成長性
株価暴落時においては、「分散投資」を意識したポートフォリオの構築がなにより重要です。一点集中型投資をしていると、暴落によっては全資産にダメージが生じるケースもあります。
分散投資の例に、為替変動リスクを意識した「輸出関連企業」と「内需型企業」の組み合わせが考えられます。また、「従来型の産業」(交通、化学、飲食など)と「成長著しい企業」(DXやIT、IoT)の組み合わせも効果的です。
投資信託であれば、先進国だけでなく、インドやASEAN諸国(※5)など新興国への投資も検討してください。地域を分散して、地政学・世界経済の変動リスクを軽減できます。
分散投資は、あらゆる状況下で有効なリスク回避策といえるでしょう。
(※5)東南アジア諸国連合に加盟している10ヶ国
2.積み立て投資|ドル・コスト平均法
株価の暴落時にも強い「ドル・コスト平均法」による積み立て投資をおすすめします。
積み立て投資は株価の変動にとらわれず、長期的な資産形成を続けるうえで有効な手段です。特に、暴落時における心理的な負担を軽減できる点で、大きなメリットがあります。
ドル・コスト平均法とは、毎月一定額を積み立てる方法です。株価が下落している時は多くの株数を、上昇している時は少ない株数を購入していきます。そのため、長期的な視点で平均購入単価を抑えられる点がメリットです。
また、ドル・コスト平均法は、投資のタイミングを分散させる効果もあります。一度に大きな金額を投資するリスクを低減できるため、初心者でも安心して始められます。
株価暴落に関して知っておきたいQ&A
株価暴落に関して、初心者の方に役立つ質問と回答を2つ紹介します。
株価の暴落に巻き込まれたらどうすればいい?
暴落に強い企業はどのように見分けますか?
株価の暴落は突然降りかかります。その時の対処法や、暴落に強い企業の特徴を解説します。いざというときに慌てないために、ぜひ参考にしてください。
Q1.株価の暴落に巻き込まれたらどうすればいい?
株価暴落は、投資家にとって大きなストレスがかかります。2024年8月のように、800社を超える上場企業がストップ安になる事態では、売買すらできません。
しかし、そんな時こそ冷静さを保つ必要があります。不安に駆られ、パニックに陥って「直感脳」で行動するのはNGです。NISAや積み立て投資を投げ出してしまっては、将来のリターンを逃しかねません。
投資先企業に将来性はないのか、一時的な下落なのかを見極めましょう。どうにもならない時は、いったん頭を休ませるのも有効です。ただし、積立投資は継続するべきです。長期的な時間軸を持てる個人投資家にとって、暴落は通過点に過ぎません。
暴落の機会に、ポートフォリオ再構築を検討するのが得策です。
Q2.暴落に強い企業はどのように見分けますか?
暴落に強い企業なのか判断する着眼点は、「状況に左右されにくい事業内容」なのかどうかです。
暴落局面にあっても、食料品や日用品などの生活必需品は一定の需要が見込めます。そのため、比較的安定した業績を維持できる可能性が高いです。
過去の例として、コロナ禍では、「医療・ヘルスケア」や「巣ごもりニーズ」に関連した企業が成長しました。
また、経営の安定性を確認しておくために、自己資本比率(※6)や配当性向(※7)も調べておくべきです。投資リスク軽減のためにも、決算資料から財務諸表もチェックすると安心です。
これらのポイントを参考に、将来性のある企業を見極めていきましょう。
(※6)企業の総資産に占める自己資本の割合
(※7)利益のうち配当金として支払っている割合を示す指標
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株価暴落における対処を学んで投資リスクを抑えよう
株価の暴落による投資リスクと対策を解説してきました。現代社会では、インターネットやSNSを通じて情報が瞬時に拡散されます。膨大な情報は有益である一方、誤った情報や偏った意見に惑わされる危険性もあります。
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